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メタボリックシンドローム(メタボリック症候群)その1

神戸市灘区 竹内内科・循環器科 健康へのヒント メタボリックシンドローム(メタボリック症候群)その1

●メタボリックシンドローム(メタボリック症候群)その1

中高年がかかりやすい生活習慣病である「糖尿病」「高血圧症」「高脂血症」は、それぞれ単独でもやっかいな病気ですが、さしたる自覚症状のないこれらの病気の重複が動脈硬化を促進し、さらには致命的な心筋梗塞や脳梗塞などを起こすことが分かっています。
最近、これらの病気を起こすもとに、糖代謝や脂質代謝などさまざまな代謝異常のあることがわかってきました。こうした危険因子が重なって存在する病態を「メタボリックシンドローム(Metabolic Syndrome)」と呼んでいます。

なぜメタボリックシンドロームは命にかかわる心筋梗塞や脳梗塞をきたすのでしょうか?
内臓に蓄積した脂肪が血液中の糖分(血糖値)や中性脂肪、血圧をあげ、さまざまな形で血管を痛め動脈硬化が進行するためといわれています。
つまりメタボリック症候群の病気の本態は内臓脂肪にあり「内臓脂肪症候群」ともいわれるわけです。

 

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●メタボリックシンドロームの一例

メタボリックシンドロームの一例を紹介します。45歳になる男性Aさんは、3年前の12月のある日、しめつけられるような胸の痛みを覚え、病院に救急搬送されました。心電図検査や血液検査、心臓超音波検査の結果から急性前壁心筋梗塞と診断されました。ただちに循環器スタッフによる緊急冠動脈造影(カテーテル検査)が行われ、心筋を栄養する冠動脈の中で最も重要な血管、左前下行枝の完全閉塞が明らかになりました。引き続き迅速なPCI治療(風船療法、ステント挿入)が行われ発症から2時間以内に閉塞部の開通が得られ、危うい状態であったAさんは順調に回復し2週間で退院されました。退院後は定期的に循環器クリニックで診察を受けるとともに、食事に気をつけ、運動量を減らさないように努められています。

さてこの男性、直前の社内健康診断の結果では血圧高値だが正常範囲内、血糖は正常、中性脂肪が若干高く、162cmの身長に対して体重65sと肥満傾向を指摘されていました。しかしご本人は体調が悪いわけではないのであまり気に留めず、相変わらず忙しい毎日で運動不足の生活をおくっていたといいます。この男性のように「はっきりした高度の動脈硬化危険因子」を持たないが、「軽度の危険因子を複数持ち」しかも「危険因子が放置されたまま」の成人はきわめて多くおられ、非常に危険な状態といえます。

 

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●メタボリックシンドロームの診断基準

 

2005年4月に日本の8つの医学会が合同でメタボリックシンドロームの診断基準を発表しました。あなたがメタボリックシンドロームかどうか、まず健康診断の結果などから、次の項目に該当するものがあるかチェックしてみてください。

次の項目のうち、当てはまるものはいくつあるでしょうか?

○ おへその高さのウエスト周囲径:男性は>85cm、女性は>90cm
○ 血圧:>130/85mmHg
○ 中性脂肪(TG)値:>150mg/dLまたはHDLコレステロール値:<40 mg/dL
○ 空腹時血糖値:>110 mg/dL

上記の一番目のウエスト周囲径に加えて、他の2項目以上が当てはまるようならば、あなたはメタボリックシンドロームと診断されます。

ここで「おへその高さのウエスト周囲径」はまっすぐに立ちで軽く息を吐いた状態で測定します。内臓脂肪がどの程度たまっているかの目安になります。
この基準値は女性の皮下脂肪の多さを考慮した結果、男性に比べ女性が大きく設定されています。ウエスト周囲径は体格や体型によって左右されますので、この基準はやや男性に厳しく、女性には甘い数値といえるかもしれませんが、男性には早めに警告してくれると解釈もできます。逆に女性のメタボリックシンドロームを見過ごす可能性があり、絶対的な数値にとらわれない判断が重要です。
正確に内臓脂肪を評価するにはできれば腹部CTスキャンで内臓脂肪量測定を行うことが薦められます(図1)。
腹部CTスキャンで測定した内臓脂肪の断面積100cm2以上が内臓脂肪蓄積の基準です。同じ肥満でも皮膚の下に脂肪の多くつく「皮下脂肪型肥満」と内臓周囲に多く脂肪がついた「内臓脂肪型肥満」を区別することができます。
腹部CTスキャンに替わる内臓脂肪の簡便な指標としてウエスト/ヒップ比があります。ウエスト÷ヒップ比が0.85以上は、りんごのようにおなかのまわりだけがポコットでている「りんご型肥満」つまり「内臓脂肪型肥満」と判断できます。
さらに簡単にはおなかをつまんでみて、つまむとかなりの厚みのある場合は「皮下脂肪型」、おなかがずいぶんでているのにあまりつまめない場合は「内臓脂肪型」が疑われます。まずは「おへその高さのウエスト周囲径」を測ってみましょう。

 

 

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●メタボリックシンドロームの人の動脈硬化の危険性は?その解消法は?

WHO(世界保健機構)によると全世界の死亡原因の3分の1が「心血管疾患」であり、死因の15%である「がん」をすでに上回っています。メタボリックシンドロームを有する人の糖尿病を発症するリスクは通常の7〜9倍。心筋梗塞や脳卒中を発症するリスクは約3倍にもなるといわれています。危険因子の数と心臓病の発症の関係を調べると、危険因子無しの群を1とすると、危険因子一個で5.1倍、危険因子二個では9.7倍、三個以上で31.3倍と、危険因子の数が増えるほど高い倍率で心臓病を起こす人が増えています。
やはり最も重要なことは「軽度であってもリスクが重なっていることが極めて危険である」と認識することでしょう。
メタボリックシンドロームと診断されたら?
とにかく原因となっている運動不足と食べすぎを徹底して改善することです。
内臓脂肪は皮下脂肪にくらべ運動量に反応して増減することが知られています。ライフスタイルの見直しで命にかかわる動脈硬化発症の危険性を解消することが可能になります

図1:腹部X線コンンピュター断層撮影(CT)の検査から、皮膚の下に脂肪の多くつく「皮下脂肪型肥満」(図右)と内臓周囲に多く脂肪のついた「内臓脂肪型肥満」(図左)を鑑別できます。内臓に脂肪の多くつくとウエスト周りが太ってくるため外見からすると「りんご型肥満」になります。


皮下脂肪型肥満と内臓脂肪型肥満のCT写真

 

 

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